間違いなく2000年代を代表するクリエイター、中田ヤスタカ率いるCapsuleの1st。

Capsuleと言えば、現在はよく知られている通り、テクノポップとフューチャーポップ、それから骨太なエレクトロ・ミュージックを融合させた、極めて「歌謡曲」的なクラブ・ミュージックを創り出すアーティストとして知られておりますが、
実はこの1stから2005年初頭に発表された5thアルバム「NEXUS-2060」までの約3年間の間は、俗に「渋谷系」と呼ばれるお洒落なラウンジ・ミュージックを演奏しておりました。

中田ヤスタカに興味のある方なら誰でも知っている事実(そしてその多くが、この初期の音楽性にあまり興味が無いようです)なのですが、私を含め一部の人たちは全く逆で、密かにこの初期の音楽に魅了され続けています。

一言に”渋谷系”とは言っても、フリッパーズ・ギターのようなネオアコ系のオシャレさではなく、系統的に言えばピチカート・ファイヴ、もしくはカヒミ・カリィに近いエレクトロ・ポップのような気がします。
でもピチカート・ファイヴみたいなファンキー・グルーヴィさはあまり無く、どちらかと言えばあくまでポップス的な色が濃いような気もしますね。

そんなラウンジ・ミュージック時代のCapsuleの1stがこの「ハイカラ・ガール」です。

とは言っても、ピチカート・ファイヴ的な渋谷系の色をガツンと見せ始めるのは次回作「Cutie Cinema Replay」からで、今作はかなり歌謡曲的で、あくまでテクノを下地にしたオリエンタルなポップス・アルバムとなっています。

全然違うんですけど、何故か私はこのアルバムを聴くと坂本龍一の「Smoochy」がダブって見えてしまいます。

[Tracklist]
1. サムライロジック (Instrumental)
2. 粉雪
3. 恋ノ花
4. 真夜中の電話
5. 花火
6. 壊れた時計
7. 愛してる愛してない
8. うつつ
9. 神様の歌声
10. カクレンボ
11. 電気十露盤
12. 東京喫茶
13. 写真
14. さくら

おすすめは7曲目「愛してる愛してない」、そして12曲目の「東京喫茶」です。
特に「東京喫茶」は最初期Capsuleの代表曲としてよく知られておりますね。

現在のCapsuleとは似ても似つかぬ曲調ですが、ボーカルのこしじまとしこさんの歌声は変わっておりませんので、それだけが唯一Capsuleといえる判断材料となりそうです。

アルバムの流れとしては、まずオールテクノのInstrumental「サムライロジック」から始まります。
8bitチップチューン風の音色と奏でているメロディーのオリエンタルさから、思わずボンバーマンのBGMを思い浮かべてしまいます。

続く2曲目からはテクノの色は急激に薄まり、超和風なイントロから始まるオール打ち込みナンバー「粉雪」が始まります。
ペンタトニックのフレーズが非常に演歌的で美しいですね。

この「粉雪」のような全体的に落ち着いたオリエンタル、もしくは和風な曲が並ぶアルバムですが、次回作からは「東京喫茶」のような元気なポップ・ナンバーだらけになっていきます。

長いCapsuleの中でも特別異質なこのアルバム、少し刺激が足りないかもしれませんが、既にデビュー当初から中田ヤスタカのポップセンスは顕在しておりました。

2001年といえば、私は9歳ですね、、、。
ちょうど桑田佳祐の「波乗りジョニー」を親に買って貰って、喜んでいた頃です。

その時から既に中田ヤスタカという天才が、こうして静かにデビューしていたのだと知ると、少し悔しい気もしています。
もっと早くから知っておけば、、、。