さて、再び「パスピエ」の紹介です。まあ、本当に今更ですが…。ご容赦下さい。

前作「わたし開花したわ」は、バンドの結成テーマである「印象派音楽とバンドサウンドの融合」を見事に体現した作品だったかと思います。
というより、80年代~00年代のあらゆるポップスを拾い集めて、それらを見事に融合させた成田ハネダのセンスがギラギラと光る作品のように思えました。
 ※「わたし開花したわ」の紹介はこちら

では、今作はどうか? というところですと、今回もその延長線上のサウンドが展開されていきます。
ただ、前作「わたし開花したわ」では80年代ニューウェーブのサウンドがあちらこちらで出現していたのですが、今作ではそのニューウェーブな雰囲気は無くなっています。
よりギターは歪みの音を増して、よりキーボードのシンセはバッキングに徹するようになりました。
どんどん、近代のバンド・サウンドに近づいたような気がしますね。

「ONOMIMONO」と、パッと聴いて私はよくわからなかったのですが、「お飲み物」の事なんですね。今コレ書いてて気付きました。

では、気合入れて全曲聴き込んでみました。

1. トロイメライ
2. デモクラシークレット
3. プラスティックガール
4. 脳内戦争
5. 気象予報士の憂鬱
6. トリップ
7. 最終電車
8. ただいま

赤字が好きな曲です

とりあえず代表曲「トロイメライ」の名曲っぷりがこのアルバムを象徴していますが、それだけに2、3、4曲目の流れが個人的にツラくて、あまり聴けていませんでした(失礼)
これを機に聴き込んでみました。


1. トロイメライ
トップバッターから今作一番の名曲。問答無用、パスピエを象徴する代表曲です。
イントロのメロディーでやられます。成田さんのインタビューを読んだのですが、この曲はまずこのイントロがあって、そこからメンバー全員で膨らませていったようですね。
成田氏曰く「このイントロなら、この曲はきっと面白い曲になる」とのこと。
そうです、このイントロは凄い。私の琴線に見事に触れてきます。正直言えば「先にやられた」という感じです。好きなんですよ、こういうメロディー。
さて、イントロで「いいなあ」と思わせて終わりではなく、ディミニッシュコード始まりの奇妙なコード進行を持つ、どことなく相対性理論然としたAメロへ繋がり、そこから「パッシングディミニッシュ」に加え、「sus4解決型の広義アーメン終止」と、まさにお手本のようなBメロへと展開され、そしてサビへ。
サビもこれまた切ない雰囲気を出す必殺コード「IIm → III7 → VIm」を用いたお手本のようなコード進行です(このコード進行は「どうして どうして トロイメライが~」のあたりで出現します)。
この曲はギター・ソロ後のCメロで転調こそするものの、基本的にはノンダイアトニックや部分転調はほとんど出てごず、非常に調性感の固まったストイックな曲調です。
普段はノンダイアトニックとか部分転調とか、型破りなコード進行を好む私ですが、この曲に限っては別で、多分それは単純にメロディーが良いからなのでしょう。
大胡田さんのいつもと少し違うアグレッシヴな歌い方も非常にグッドです。やっぱ上手いなこの人。


2. デモクラシークレット
ちょっとフュージョンっぽいイントロですが、実際はややプログレ風味の疾走ポップロックです。
トロイメライとは全く異なるヘヴィな音作りもグルーヴィで良いですね。
この曲はボーカルの大胡田さんが本当に良い。ベスト・パフォーマンス賞です。
ライブで見たら、ハマる気がするな。確実に。


3. プラスティックガール
このタイトルを見るとcapsuleのあの曲を思い出すのですが、あちらとは曲調が全く違います。
成田さんのフンワリしたシンセ音に導かれてゆったりと始まるのですが、そこから乗っかってくる三澤さんのギターの乾いた音色がとても良いですね。ピッキングのアタック感がしっかり耳に飛び込んできます。
サビは何故かHysteric Blueの「Home Town」を思い出してしまいました。何故だろう。全然違うのに。
それだけこういうバラードタイプの曲って聴いてない事に気付かされるのでした。


4. 脳内戦争
とても人気のある曲みたいですね。「梨本P」みたいとか、「中毒性がやばい」とか、パスピエのなかでは有名な曲だと思います。
私は全然ハマらなかったんですけど(失礼)、こういうパンキッシュな曲って、ダメなんですよ。
サビのキーがどんどん上がっていったりとか、そういうテクニカルな部分は凄いなあって思いますけど。
なんせ次の曲がかなり私の中でキてしまったせいで、結構飛ばしてます(好きな人、本当にすみません)。
「ESPを使いたい」って歌詞があって、そんなにESPのギター使いたいのかな、って思ってましたが、よくよく考えれば超能力のESPのこと言ってるような気がしてきましたね。普通はそっちか(笑)


5. 気象予報士の憂鬱
コレですよ。最初はアルバム全体を流し聴きしてたわけなんですが、「トロイメライ」が終わってからからこの曲まで一回もフックが来なくて、「わたし開花したわ」より、アルバム全体の完成度はそんなに高くないのかもなあなんて思ってたら、1分18秒付近の、「明日もし晴れたら あなたに会えるかな」の直後に飛び出す、ノスタルジック&ファンタジックなメロディ!
その後はさほど展開せずに終わっちゃうんですけど、凄くもったいない曲です。このメロディをもしイントロにして、トロイメライくらいの曲展開で構築すれば、ありきたりではありますが凄い名曲の予感が…。
まあ、こうもあっけなく終わるからこそ、この曲はいいのかもしれませんねえ。


6. トリップ
「トロイメライ」以外なら、この曲が今作最高に好きな曲です。大胡田さんがメランコリックに歌うこのAメロが、気がつけば頭の中でループしている時があります。時には口付さんだり…。
こういう状態をきっと、「中毒」っていうんだろうなあ、なんて思いながら時々聴き返してるうちに、すっかりハマってしまいました。
前述のとおり、メランコリックなAメロから、実にスムーズに疾走曲へと切り替わります。
その疾走感たるや涼しげでとても素晴らしい曲展開能力で、一度疾走パートが終わると、再び素晴らしいAメロへ戻り、また疾走を繰り返します。
2回目の疾走パートは1回目とメロディーが異なり、大胡田さんがハイなキーを伸びやかに唄い上げます。いいですね~。


7. 最終電車
クライマックス感のある疾走曲です。これも有名な曲。ローズ・ピアノのイントロに導かれ、キャッチーなメロディーで走り抜けるサビを持つ、どことなくYUKIっぽさが溢れています。なんだろう、女性ボーカルの組んでる人たちはこういうのやれば人気出ると思いますよ。最近はこういう王道ポップロックって人気ではないのかもしれませんが。
そして中間のローズ・ピアノの暴れフレーズはテクニカルで非常にグッドです。東京芸大卒の実力の半分も出してなさそうな余裕のある感じがなおさら。


8. ただいま
こういうのも私はあまり聴かないので、「どう良いか」というのを評価できないんですけれど、The Brilliant Greenとか、ハンバートハンバートとか、ああいうゆったりしたノスタルジックなバラードをやるバンドが好きな人は、多分好きなんだろうなあと思います。いえ、自信は全くありませんが。
ラスト終盤の音の洪水はエモーショナルで良いですね。


最後に、「ONOMIMONO」のダイジェストムービーを貼っておきます。

1. トロイメライ(イントロ)
2. デモクラシークレット
3. トロイメライ(サビ)
4. プラスティックガール
5. 気象予報士の憂鬱
6. 脳内戦争
7. トリップ
8. 最終電車
9. ただいま
10. 最終電車(イントロ)

の順番で流れます。

では、最後まで読んで頂き、ありがとう御座いました!